日本でなかなか出会えない一本に、スペイン北部の街なら出会えるのか。サンセバスチャンの正規店を訪れる前、私が確かめたかったのは、展示されている時計の顔ぶれだけではありません。日本から来た旅行者に、どのような案内があるのかという点でした。
サンセバスチャンは、スペイン北部・バスク地方の海沿いの街。ドノスティアとも呼ばれ、ラ・コンチャ湾の景観で知られています。日本から気軽に通える場所ではないからこそ、店頭で聞けた説明には持ち帰る価値があります。
今回は、実際の展示写真と店員との会話から、この一店の販売の考え方をたどります。外観だけでは分からない、希望の時計を相談した先に見えてきたこと。そこに、海外での購入を考える手がかりがありました。
日本で見慣れた展示。その先の案内はどう違うのか

訪問したのは、Garibay 2にある「JOYERÍA OLAZÁBAL(オラサバル)」です。石造りの外観にグリーンのロレックスのサインが映え、街並みに溶け込む落ち着いた店構えでした。
店外のショーウィンドーから店内まで、私が見た範囲では、展示の顔ぶれは日本の正規店と大きく変わりません。海外だから珍しいモデルがずらりと並んでいる、という印象ではありませんでした。

ただ、展示が似ていることと、購入の案内が同じであることは別です。ここからは、時計そのものに加えて、札の表示と店員の説明を確かめていきました。
「展示用」の札で分かること、まだ分からないこと

店内には「展示用」を示す札がありました。店外を撮影した動画にも、「LOS RELOJES DE ESTA VITRINA SON MODELOS DE EXPOSICIÓN」という表示が写っています。「このショーウィンドーの時計は展示用モデルです」という意味です。

「展示用」の札は日本にもあります。一方、私がこれまで訪れた海外の店では、「販売可能」と明記された札を見たこともありました。台北、台南、タイ、シンガポール、オーストラリア、ロサンゼルスなどを訪れた経験がありますが、すべての場所で同じ表示や販売方法だったという意味ではありません。
今回の訪問店で目にしたのは展示用の表示です。時計が並んでいることだけで、その個体を購入できるとは判断できません。では、展示とは別に販売できる時計があるのか。希望を伝えた場合はどう案内されるのか。そこは直接聞く必要がありました。
店内にいた一組と、扉を開けて感じた空気
店内では、現地の方らしく見える一組がスタッフと話していました。卓上に時計は見当たらず、談笑しているようにも見えました。居住地も、購入が成立していたかどうかも分かりません。
入口のスタッフも店内の店員も、私には堅めの対応に感じられました。気軽に雑談が弾むというより、こちらから質問をして話を進める雰囲気です。写真には写らない、現地に入ってみて初めて分かる空気でした。
もっとも、接客の親しみやすさだけで購入の可能性は決められません。知りたいのは、希望する時計をどのように案内しているのか。その点を確かめるため、在庫について尋ねました。
「今はない」の後に続いた、普段からの顧客の話
訪問時の回答は、現時点では販売できる時計がないというものでした。ただ、会話はそこで終わりません。私が保有しているGMTマスターⅡについても話す中で、待っている顧客と、案内の順序について説明が続きました。
会話の要旨は、待っている顧客がおり、普段からの顧客を先に案内するというものです。待ち期間も尋ねましたが、具体的な長さは答えられないとのことでした。
私が特に注目したのは、在庫の有無に加えて、誰に案内するかという考え方まで聞けたことです。この店では、入荷のタイミングだけでなく、日頃からの付き合いも案内に関わるのだと受け止めました。
ここで説明されたのは、普段からの顧客を優先する姿勢です。「日本人には販売しない」という国籍条件を示されたわけではありません。購入実績の金額や必要な来店回数も確認していないため、それらを購入条件として付け加えることはできません。
待っている顧客がいる。それは購入の確約なのか
購入希望を伝えて案内を待つ仕組みは、一般にウェイティングリストと呼ばれます。ただ、今回この店で確認できたのは、待っている顧客がいることと、普段からの顧客を先に案内すること、待ち期間は示せないという説明までです。旅行者として登録できるか、受付順に案内されるかは確認できていません。
希望を伝えたことと、時計が確保されたことは分けて考えたいところです。仮に長く待つとしても、期間だけを購入の確証にはできません。今回の店で「1年」「2年」「5年」といった待ち年数が提示されたわけでもありませんでした。
日本から案内を待つなら、連絡を受けた後にいつまでに受け取る必要があるのか、再渡航できるのかも重要です。「何年待ちか」だけでは、旅行者にとって実行できる購入計画かどうかは分かりません。
国内で継続して相談できる強みを、海外で考えた
普段からの顧客を優先し、案内までの期間は示せない。この説明を聞くと、短い旅行日程の中で希望の一本にたどり着く道筋は描きにくいと感じます。
一方、日本に住む私たちには、国内なら生活の中で継続して相談しやすく、案内があった際にも対応しやすいという利点があります。店との付き合いを考えるうえで、無理なく足を運べる距離は軽視できません。
もちろん、日本でも通えば必ず買えるわけではありません。今回の一店から日本と海外の購入確率を比較することもできません。それでも、「海外なら買いやすい」という期待だけで行き先を決める前に、自分が相談を続けられる条件まで見る。この視点は、国内でのロレックスマラソンにも生かせると感じました。
サンセバスチャンは穴場か。今回の一店で得た答え
今回のオラサバルを、日本人旅行者が希望の人気モデルを気軽に購入しやすい穴場と判断するには至りませんでした。在庫についての回答だけでなく、普段からの顧客への案内を大切にする姿勢と、待ち期間を示せないという説明を合わせて受け止めた結果です。
収穫は、遠い街の正規店を「買えるかもしれない場所」のままにせず、どのような案内をしているのかまで具体的に知れたことでした。展示の札、店内の雰囲気、在庫を尋ねた後の会話。その積み重ねが、写真だけでは得られない判断材料になります。
現地へ行く機会がない方にも、この訪問を通して、ご自身なら何を質問するか、国内と海外のどちらに時間を使うかを考えていただければと思います。店舗選びや来店方法の整理は、ロレックスマラソンの戦略でも詳しく紹介しています。
訪問日:2026年9月23日。取材対象:JOYERÍA OLAZÁBAL/Garibay 2, 20004 San Sebastián。写真・動画・会話記録は筆者によるもので、会話は要旨を日本語化しています。本記事は今回の訪問時にこの一店で得た情報と筆者の感想を扱います。他のスペインの地域や他国の販売ルール、現在の在庫を示すものではありません。ロレックス公式の店舗案内。


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